宿は渋温泉で一番有名といわれている金具屋。
旅館は4棟の建物で構成されており、一番興味があった 斉月楼 に宿をとりました。
ちなみに金具屋というこの屋号は、創業者が馬の蹄鉄等を作る鍛冶屋だったことに由来するそうです。なるほど、金具ね。
創業から250年以上の歴史ある旅館で、神明の館(鉄筋コンクリート4階建て)、斉月楼(木造4階建て)、居人荘(木造3階建て)、潜龍閣(木造2階建て)で構成されています。
特に木造4階建ての斉月楼は登録有形文化財に指定されており、千と千尋の神隠しの油屋に似ていると話題になりました。
中に入ると世界観丸出し!
達筆なら更に良かった。笑
どこを見ても手が混んだ仕事です。
この旅館の6代目が斉月楼を建設するにあたり、大工と日本中の名旅館を歩きまわったらしいのですが、その時に見たお気に入りの意匠をふんだんに採用したとのことです。
様々な様式が躊躇なく盛り込まれており、型にはまっていない空間が特徴的です。
使い古されたものも再利用する発想は、逆に現代的かもしれません。
伝統的な技法の中にキャッチーな意匠も取り入れており、とても親しみを感じます。
一番奥の突き当りが宿泊した部屋。
廊下は忍び返しともいわれる鶯張りになっており、歩くと音がします。いわゆる昔の防犯対策!
金具屋の客室は4棟合わせても29室しかありません。登録有形文化財である斉月楼はその内の7室です。
部屋の造りが全て違うのでどの部屋に泊まるか悩みましたが、斉月楼の最上階にある “長生閣” を選びました。
こちらは貴賓室として使われていた部屋で、特に贅沢な造りです。木造4階建ての醍醐味はやはり最上階でしょう!
気を付ける点は、長生閣は人気があるので早めの予約が必要です。私も予約の段階で長生閣がの空きがほとんど無かった為、唯一予約が取れる日に合わせてスケジュールを変更しました。
入口のタタキは吹き寄せケヤキで造られています。ケヤキの無垢板による美しい乱張り。
花頭曲線による襖。お寺の花頭窓のような造形ですね。
もちろん引き分け戸です。
天井は折上げ式格天井で組まれています。
折上げで組める大工さんは現在は少ないと聞きますが、一度でいいから自分の仕事でも採用してみたいものですね。
場所は変わりますがこちらは飛天の間と呼ばれる大広間。面積が167畳もあり、同じく登録有形文化財として指定されています。
こちらも天井は “折上げ式格天井” ですが、戦争の時に雪の重みで一度潰れたとの事です。
よく見るとこちらの格天井は格子の内側でさらに細木で井型に組まれているのですが、これは改修工事の際に追加された装飾です。理由は大きな板材が調達できなかった為の工夫。
通常は格天井のマス目に無垢の一枚板が使われるのですが、当時はこの大きいマス目に合う幅広の一枚板が調達できなかったため無垢板を継いで張っているのですが、井型の細工は下から見上げたときに継ぎ目に気付かれないようギミックとして施された細工だそうです。
結果的に元を上回る見事な出来栄え!
夜は外に出て夜景を楽しみました。
こちらが斉月楼の外観。ライティングされて浮かび上がる姿は見事です。
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